背景
北海道に生息するアズマヒキガエルは国内外来種であり、現在は石狩川流域や札幌市、室蘭市、函館市などで定着しています。それでは、北海道各地のアズマヒキガエルはどこから来たのでしょうか?
材料と方法
北海道各地域(旭川市、江別市、石狩市、札幌市、室蘭市、函館市)のアズマヒキガエルを捕獲し、ミトコンドリアDNAのチトクロムb遺伝子配列を調べ、それを先行研究結果と比較し、産地を推定しました。先行研究によって報告されいている遺伝子配列と同じ、あるいはよく似たアズマヒキガエルが得られた地域が、北海道集団の産地と推定されます。
結果と考察
北海道集団から10の遺伝子型が見つかりましたが、どれも関東地方や静岡県のアズマヒキガエルと同じ、またはよく似た塩基配列を持っていました。北海道に地理的に近い距離にある東北地方のアズマヒキガエルよりも、地理的に遠い関東地方などのアズマヒキガエルと遺伝的に近いことが示されました。
これらの結果から、北海道へ関東地方近隣から複数回のアズマヒキガエルの侵入があったとみられます。地域ごとに細かく見ていくと、石狩川流域(旭川市、江別市、石狩市が含まれる)の特徴として、旭川集団は多様度が高く、旭川集団と同じような遺伝子型を持つ個体が江別集団や石狩集団からも確認されています。したがって、旭川に複数系統が定着し、さらに石狩川に沿って分布を拡大し、現在は川の河口に位置する石狩市までに広がったのでしょう。
一方で、その他の地域集団は、それぞれ遺伝子型が異なりました。したがって、札幌、室蘭、函館の各地域集団は独立して持ち込まれたとみられます。それらのうち、札幌集団は豊平川流域に接しており、今後は豊平川流域に分布を広げる可能性があり、さらに石狩川流域集団と分布を接して遺伝的交流を持つ可能性が懸念されます。
以上の内容は、Suzuki D., Kawase T., Hoshina T., and Tokuda T. (2020) Origins of
Nonnative Populations of Bufo japonicus formosus (Amphibia:
Bufonidae) in Hokkaido, Japan, as Inferred by a Molecular Approach.
Current
Herpetology 39(1): 47‒54.にて報告されたものとなります。